起業するには金融機関から創業融資を受けるだけでなく行政などから金銭的援助を受けることもできます。特に日本は助成金や補助金、起業したい人への支援が他国に比べて充実しているとされています。

この記事では起業するうえで知っておきたい補助金や支援金、助成金など2024年の最新情報をわかりやすく解説していきます。

創業融資と創業助成金、創業補助金のちがい(2024年版)

起業の助成金

創業のための融資を調べている方はすでに助成金や支援金、補助金が存在していることを知っているかもしれませんが、これらの違いを理解している人は多くないかもしれません。

そもそも起業する際にはお金を銀行などから融資してもらうなどの形で借りて事業を始めることが一般的ですが、これは創業融資と言います。融資は返済義務があるのに対して、創業助成金や創業補助金は返済は不要です。融資など起業の資金調達方法に関してはリンク先の記事で解説していますので、こちらもあわせて参照してください。

簡単に言うと、創業融資は金融機関にお金を返さなければならないのに対し、創業助成金・創業補助金は支給されたら返さなくてもよいということになります。起業で失敗する人も少なくはないので、このような国からのサポートは、起業家にとって心強い存在となるはずです。

起業助成金とは

起業助成金とは、主に厚生労働省が主導して行っている制度で、特定の事業などを行う企業や団体組織に対して財政的な支援を行います。厚労省の他にも国や地方自治体が管轄しているものもあります。

起業補助金とは

起業補助金とは、主に経済産業省が主導している制度で、経産省の外局として付属している中小企業庁が管轄しているものが多いです。また助成金と同様に地方自治体で独自に出している補助金もありますので、ビジネスを始めるロケーションに応じて現地の自治体で補助金を調べると良いでしょう。

起業支援金とは

起業支援金とは、主に国政や地方行政によって支給されるお金で、一般的に災害や金融相場の不況によって一時的に支給される財政的支援のことを指します。例えば世界的なコロナ禍によって多くの事業が不振に陥った際にはコロナ支援金などが国や地方自治体から提供されましたが、一時的に期間限定で支給される性質の財政的支援は給付金などとも呼ばれます。

上記の助成金や補助金とは異なり、起業支援金は内閣府主導で行われ、地方創生を目的とした企業支援事業となっています。そのため、地方を活性化する起業家を支援する形で行われるものと言えます。

起業の助成金・補助金・支援金の種類

起業を支援する助成金や補助金は政府主導のものと地方自治体が提供しているものがあり、その種類はたくさんあります。なかでも創業助成金と創業補助金は起業支援のものとして主要なものです。

創業助成金と創業補助金があり少しややこしいですが、前述の通り基本的に助成金は厚労省が財源で人材育成や雇用拡大を目的としているのに対し、創業補助金は経産省が主管で経済成長を促進させることを目的とされています。また、助成金は通年で申請可能なのに対し、補助金は予算上限が決められているため必ずしも受けられないケースがあるともされています。ただ、地方自治体レベルになると助成金も補助金も起業支援する意味では同じように使われていることもあるので、厳密に区別する必要もないでしょう。

また必ずしも「創業助成金」「創業補助金」という名前でなくとも別の名目になっている助成金・補助金は各都道府県・市町村にありますので注意して探すようにしてください。

創業助成金

起業の創業助成金

創業助成金とはその名の通り起業を支援してくれる助成金のことですが、2024年には東京都や大阪府、神奈川などさまざまな地方自治体が独自の創業助成金を募集しています。

2024年の創業助成金 – 東京都では300万円も

例えば東京都の中小企業振興公社が主導する創業助成金では助成対象経費の3分の2以内と定められていますが、最大300万円まで助成金を受けることができます。また、助成対象者は都内で創業予定の人だけでなく5年未満の中小企業等も含まれているため、起業してからでも申請できます。

東京都の創業助成金をはじめ、地方自治体の助成金も年に申請できる期間が設けられていることがあるので注意が必要です。2022年の東京都の創業助成金の申請は4月と10月に2回行われましたので、2023年とそれ以降の年も創業助成金申請も同じタイミングになると思われます。申請を検討されている方は時期をしっかり確認してください。

東京都で起業するには、色々とお金がかかりそうですが、都内の市町村でも目的ごとにさまざまな助成金が交付されているので、一概に都内の起業が困難であるとは言い切れません。例えば雇用創出のための助成金やオフィススペースのための助成金、移住のための助成金など目的によってきめ細やかな助成金が用意されていますので、在住している地域の行政の窓口に問い合わせるとよいでしょう。

個人事業主でも創業助成金をもらえる?

創業助成金に関してよくある質問が『個人事業主でも創業助成金をもらえるの?』というものです。結論から言うと個人事業主の方は創業助成金は原則申請できませんが、助成金の種類次第で受け取れるものとそうでないものがあります。

上記の通り、東京都では創業助成金の対象者は創業予定、もしくは5年未満の中小企業となっています。大前提としては中小企業の起業家が対象なので、雇用保険適用事業所の事業主でないと原則申請はできないことになっています。そのためフリーランサーとして確定申告だけしているのが主で自分以外の誰かを雇って労働保険の手続きなどをしていない個人事業主の方は対象外となります。

ただ、助成金の種類によっては個人事業主の人でも申請できる助成金はあります。例えばキャリアアップ助成金や地域開発助成金などの名目で個人事業主の人も対象となっている助成金は地方自治体にありますので、地元の自治体に確認しましょう。

創業助成金の例

東京都のように最大300万円支給される創業助成金は異例ですが、その他にも数多くの助成金が全国で交付されています。日本の各地で、助成金があるので、どこに住んでいようと起業準備する上で、助成金の調査は必須です。

以下では創業助成金や起業にかかわる助成金を一部紹介します2024年の創業助成金についての詳細は各自治体に問い合わせるようにしてください。

  • 東京都 : 創業助成金
  • 神奈川県横須賀市:特例子会社設立支援事業助成金
  • 兵庫県:起業家支援事業助成金(東京23区枠)
  • 北海道枝幸町:新規創業助成金(雇用助成金)
  • 北海道稚内市:稚内市内中小企業振興助成金(新規創業者支援事業助成金)
  • 宮城県加美町:加美町創業者支援事業助成金
  • 埼玉県坂戸市:創業支援事業助成金
  • 千葉県千葉市:中小企業者向け助成金
  • 富山県魚津市:魚津市創業者支援事業助成金
  • 石川県珠洲市:仕事場創業・拡大支援助成金制度
  • 山梨県:山梨県産業集積促進助成金(製造業・情報産業・オフィス等の設置)
  • 京都府亀岡市:亀岡市創業支援助成金
  • 広島県竹原市:竹原市まちなか賑わい創業支援事業助成金
  • 愛媛県愛南町:企業化支援助成金
  • 福岡県吉富町:創業助成金制度
  • 熊本県熊本市:熊本市創業ステップアップ支援助成金
  • 鹿児島県奄美市:奄美市創業支援事業助成金

創業補助金

創業補助金

創業補助金も創業助成金と同様、起業する人に経済的支援をしてくれる補助金です。上記の通り、補助金は経済産業省が管轄となっており経済成長促進が大きな目的となっているため交付される金額が助成金よりも大きくなることがあります。ただ予算に上限があることがあるため、必ずしも通年で申請できるものではなく、予算次第では補助金の交付を受けられなくなることもありますので注意が必要です。

2024年の創業補助金

地方自治体で交付している創業補助金の種類は助成金よりも多く、起業だけでなくその他の設備投資にも補助金を出している市町村が多いです。

東京都は創業補助金ではなく上述のように創業助成金と呼んでいます。そのため厳密には“東京都の創業補助金”というものは存在しませんが、実質的には助成金と同じものと考えてよいでしょう。ただ対照的にその他の都道府県では創業補助金が多く交付されており、特に大きな都市では大阪府が起業家支援の創業補助金を充実させていることがわかります。大阪府の起業家グローイングアップ補助金をはじめ、各市町村でも中小企業等チャレンジ補助金やテイクオフ補助金制度、創業促進インキュベーション支援事業などさまざまな名目で起業家向けの創業補助金が提供されています。

個人事業主でも創業補助金はもらえる?

こちらも創業助成金と同様に、個人事業主でも創業補助金を受給できるのかが気になるところですが、結論から言うと個人事業主は原則として対象外となっています。というのも、これらの補助金は中小企業を起こし、地域の人を雇用したり産業を興すことで地域経済の活性化を手助けすることが目的のため、人を雇用していない個人事業主は対象にできないからです。

個人事業主だけど創業補助金を受給したいと考えている方は、事業を法人化すると受給対象となる可能性があります。ただ、この場合は誰かを雇って雇用保険適用事業所の事業主となっている必要がある可能性がありますが、法人化によって節税効果もあります。個人事業主と法人化についてはリンク先の起業する方法についての記事で解説していますのであわせてご覧ください。

また創業助成金と同様に、各都道府県などの自治体によっては個人事業主でも受給できる補助金がありますので詳細は地域の自治体に問い合わせるようにしましょう。

創業補助金の例

東京都のように最大300万円の補助金が交付される創業補助金は稀ですが、地方自治体では幅広い目的のための補助金が提供されています。

以下では各自治体で交付されている創業補助金を一部紹介します。2024年の創業補助金についての詳細は各自治体に問い合わせるようにしてください。

  • 東京都板橋区:板橋区ベンチャー企業・企業化支援賃料補助金
  • 北海道札幌市:さっぽろ新規創業促進補助金
  • 青森県:創業・成長産業推進金融対策事業費補助
  • 岩手県奥州市:奥州市創業支援事業補助金
  • 秋田県横手市:起業・創業支援事業補助金
  • 山形県米沢市:創業支援事業費補助金
  • 福島県:地域課題解決型企業支援補助金
  • 福島県郡山市:郡山市クラウドファンディング活用支援補助金
  • 埼玉県本庄市:本庄市創業者支援推進事業補助制度
  • 千葉県千葉市:千葉市創業支援補助金
  • 石川県:石川県移住創業者無利子化補助金
  • 岐阜県:岐阜県スタートアップ企業支援補助金
  • 静岡県:ICT関連産業立地事業費補助金
  • 愛知県:あいちスタートアップ創業支援事業費補助金
  • 京都府:企業支援事業費補助金
  • 大阪府:大阪起業家グローイングアップ補助金
  • 大阪府東大阪市:創業促進インキュベーション支援事業
  • 鳥取県八頭町:八頭町「出る杭を伸ばす」事業者応援補助金
  • 島根県:スモール・ビジネス育成支援補助金
  • 山口県:やまぐち創業補助金
  • 徳島県阿南市:わくわく移住支援事業補助金
  • 愛媛県:愛媛グローカルビジネス創出支援事業費補助金
  • 福岡県:福岡よかとこ起業支援金(補助金)
  • 長崎県:長崎県地域産業雇用創出チャレンジ支援事業補助金
  • 大分県:地域活力づくり総合補助金
  • 沖縄県:沖縄型オープンイノベーション創出促進事業ITスタートアップ補助金

2024年の起業支援金

起業の支援

創業助成金・補助金のほかにも起業のための支援金があります。これは創業助成金などと比べると数は多くありませんが、特に地方自治体で企業や起業家を誘致するために交付されているものがあります。支援金は上記の通り一時的だったり特殊な条件のもとに支援することが前提になっている場合が多いですので、必ずしも自治体で交付されている支援金が通年、もしくは恒常的に提供されているものとは限りません。地域の起業支援金に申請する際はまだ申請が可能かや申請条件など注意して確認するようにしましょう。

起業支援金は個人事業主でももらえる?

こちらも創業助成金や創業補助金と並んでよくある質問ですが、起業支援金に関しては個人事業主でももらえる可能性があります。というのも起業支援金の場合は地域活性化や移住者誘致を目的として交付されるものが多いため、中小企業を対象にしたものであるとは限らないからです。サラリーマンだった個人が独立して地方で事業を起こそうという場合、創業助成金などは対象とならない可能性が高いですが、起業支援金には申請できる可能性が十分あります。

起業支援金に関しては創業補助金などよりも数が少ないので、お住まいの地域で起業支援金がある場合は支給条件や支給対象などしっかり確認してから申請するようにしましょう。

起業支援金の例

起業支援金は創業助成金などのように通年で申請できるとは限りませんので、検討されている方は申請条件や期間などをしっかりと確認しましょう。以下では2024年に交付されている起業支援金や関連の支援金を一部紹介しますが、詳細はそれぞれの自治体に問い合わせるようにしましょう。

  • 北海道札幌市:移住による就業者・起業創出事業(移住支援金)
  • 北海道富良野市:富良野市UIJターン新規就業支援事業に係る移住支援金
  • 青森県五所川原市:五所川原市UIJターン起業・就業創出事業(移住支援金)(最大100万円支給)
  • 岩手県:岩手県地方創生起業支援金
  • 福島県:福島県12市町村起業支援金
  • 新潟県五泉市:ごせん起業者応援事業
  • 長野県:ソーシャル・ビジネス創業支援金(長野県地域課題解決型創業支援事業)
  • 長野県長野市:長野市移住者起業支援金
  • 滋賀県:滋賀県起業支援金
  • 京都府伊根町:伊根町開業支援金交付事業
  • 鳥取県:設立・開業一年後支援金
  • 岡山県:おかやま起業支援金
  • 山口県宇部市:宇部市若者ベンチャー創業支援金
  • 長崎県佐々町:佐々町地域産業雇用創出チャレンジ支援事業移住支援金
  • 鹿児島県南さつま市:かごしま移住就業・起業支援事業における南さつま市移住支援金

創業助成金・創業補助金のメリット・デメリット

ここまでは創業助成金・補助金の内容や特徴について解説してきましたが、起業家がこれらの助成金などを受給する上でのメリットやデメリットを見ていきましょう。

まずメリットですが、創業前の企業だけでなく創業後にも受給できる点でしょう。また、すでに述べたように助成金・補助金・支援金は創業融資のように返済義務や利息などがないのも大きな利点です。東京都では最大300万円の創業助成金が、青森県の五所川原市では起業創出事業に参加する移住者には最大で100万円の支援金が支給されます。

創業助成金・補助金が受給できると事業計画の可能性を国や地方行政に受け入れられたことにもなるため、会社の信用スコアにも好影響を及ぼし、創業融資やその他の追加融資も受け入れられやすくなるメリットがあります。

一方デメリットですが、国や地方行政が募集するものなので支給までに時間がかかる点が挙げられます。特に審査には時間がかかりますし、審査を通ったあともすぐに補助金などが支給されるわけではないのですぐに資金が必要な場合には頼りにできないのがデメリットでしょう。また審査を通すために書類作成が必要となるため、起業したばかりで忙しい最中に書類作成に時間と労力を割かなければならなくなるとそれなりの負担になります。

申請時に事業計画書を作成した場合、審査を通った後も事業報告書を提出する義務が発生する場合があるので、交付されたらすぐ終わり、というわけではない点も覚えておく必要があるでしょう。

創業助成金・補助金のメリット:

  • 返済義務や利息がない
  • 創業助成金や創業補助金の種類によっては金額が大きい
  • 受給できると信用度が上がり融資にも好影響

創業助成金・補助金のデメリット:

  • 時間がかかるため、早く資金が必要な場合に不便
  • 書類作成の労力が負担になることも
  • 交付後も事業報告をし続けなければならない可能性

女性の起業を支援する創業助成金・補助金・支援金

起業の成功例を見てもわかる通り、成功している女性の起業家はますます増えています。ただ女性の起業家の数が少ない現状は変わっておらず、国や地方行政が女性起業家を支援する助成金や補助金はだんだんと増えています。

また女性起業家の支援は助成金という形だけでなく創業融資も数多くあります。有利子の融資ですが、利息が低かったり返済期間が長く設けられているということもありますので起業する上で強い味方になる可能性もあります。

2024年の女性起業家向けの創業助成金・補助金・支援金・創業融資

以下では、2024年に利用可能な女性起業家を対象とした助成金や補助金、支援金そして創業融資まで幅広く紹介します。本稿を読んだ時点でこれらの助成金の申請期間が終了している可能性がありますのでしっかりと申請条件などを確認するようにしましょう。また詳細についてはそれぞれの主催自治体に問い合わせるようにしてください。

  • 国・日本政策金融公庫:女性、若者/シニア起業家支援資金
  • 東京都:女性・若者・シニア創業サポート事業
  • 東京都:若手・女性リーダー応援プログラム女性事業
  • 秋田県鹿角市:若者・女性創業資金利子補給費補助金
  • 茨城県:女性・若者・障害者創業支援融資
  • 神奈川県川崎市:女性・若者・シニア起業家支援資金
  • 埼玉県:女性・若者経営者支援資金
  • 兵庫県:商店街若者・女性新規出展チャレンジ応援事業補助金
  • 和歌山県和歌山市:シニア・女性起業家支援資金利子補給金
  • 宮崎県:創業・新分野進出支援貸付(女性・若者・シニア・UIJターン者・地域応援)

創業助成金・起業支援金・創業補助金 – まとめ

この記事では起業するうえで知っておきたい創業補助金や創業助成金、支援金、創業補助金についてわかりやすく解説してきました。起業には費用がかかるので、躊躇している人も少なくないでしょう。ただ、色々な助成金があるので、諦めるのは、まだ早いです。助成金、補助金、そして支援金は財源の出どころが違うため呼称が異なることがありますが、地方自治体によってはどれも同義的に使っている場合があります。

創業補助金・創業助成金と創業融資の最大の違いは返済義務の有無です。創業融資は利息を含めて返済する必要がありますが、創業補助金や創業助成金には返済義務がありません。また、地方自治体では起業のための助成金と補助金、支援金が幅広く募集されており、なかには東京都の創業助成金が最大300万円支給されるように大きな支援を提供している都道府県もあります。

また創業だけではなく移住や設備投資を抱き合わせた助成金や補助金なども数多くありますので、自分に合った助成金などを探すと効率よく起業することができます。ただ、創業助成金・創業補助金などの審査には時間がかかり、すぐにお金が支給されるわけではないため、申請する時点では余裕のある起業資金計画が必要です。2024年度の創業補助金・創業助成金・起業支援金はすでに発表されていますが、これらの詳細に関しては各自治体に問い合わせるようにしましょう。